収穫2012

山中史郎さま

ぼくたちのマスカット・ベーリーAの畑にはビニールの屋根がなく、ほとんどすべての葉っぱも落ちてしまったので、遠くからでも、白い袋が並んでいるのがよく見えました。

畑の持ち主さんから撤収の催促がありました。賛同者の方やぼくの親を通じてそういうことを伝えられ当惑しました。なぜぼくに直接ではないのか。直接言わないということによって何かしらのメッセージを伝えようとしているのではないかと一瞬思いましたが、空しいので考えるのはやめました。

決して催促されたからではなく、ぶどうが熟れる時期が来たようなので収穫することにしました。史郎といっしょに作業できなかったことがとても残念です。

ベリーAの収穫は通常、袋に入ったまま枝から切り離します。だから枝にぶら下がった房をじかに見る機会がありません。せっかくなので房を枝につけたまま袋を外して写真を撮りました。

半月前にいくつか袋を外してみた時は、全く熟れてないようだったのに、意外にも熟成が進んでいました。ジベレリン処理によって種無し処理や生長促進をすると成熟期が早まるのです。ぼくらはジベ処理をしていません。この地域ではジベレリン処理をするのは常識なので、このころに収穫をするというのは孤独です。でも適期です。

収穫カゴに2つ分。30kgぐらいあるかもしれません。300kgぐらい出来ると思っていたので1/10です。最初はこんなもんでしょうか。

さて、ここから下は、袋をかけなかったベリーAです。赤い葡萄が生っているように見えますが、これはほとんど皮だけで中身は腐って溶け落ちていて空っぽでした。

一般にマスカット・ベーリーAは日本固有で日本の気候に適した品種として知られていたり、「ぶどうの里青野」では「ここの土地はベリーAに合っている」と言われたりします。しかし上の3枚の写真からはそういうことが全く読み取れません。ビニールで雨よけをしない、袋をかけない、農薬をかけない、そういう条件下では全く実らないのです。

きっちりビニールをかけ、きっちり農薬をかけ、きっちり袋をかける。そういうことがベリーAを栽培する者の〈常識〉としてあるわけです。〈常識〉の上で、適している、合っている、そういわれていると理解する必要がありそうです。ここの土地に合っているというのは、単に気候に合っているという意味ではなく、ここの土地のぶどう農家はきっちり〈常識〉をふまえてぶどうの栽培をするという、自然と人の営み、風土に合っているということのようです。

ここのぶどう畑とはさようならですが、ぼくは大きな収穫を得た気持ちです。

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