ぶどうの花といえば – 脱ジベレリン論

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山中史郎君

速報です!往復書簡だけど連投です!
ぶどうの花が咲き始めましたよ!
昨日の段階で、まだ2房しか見かけていませんが、
数日で一気に咲きそうです。

よいタイミングなので農薬の話をひとつ。
ぶどうの里では、ぶどうの花といえばジベレリンです。

生食用ぶどうのほとんどは、
農薬(植物生長促進剤、人工的に化学合成されたホルモン剤)によって、
無核化(種無し処理)するのが、ぶどう作りの常識になってます。
その農薬の名はジベレリンといって、開花期に合わせて使用します。
通称「ジベ処理」。
開花の前とか後とかぶどうの品種によって使い方は違うのだけど、
その時期を外すと、あるいは天候によっても、
使っても種有りになっちゃうこともあるそうです。

天然のジベレリンという物質は植物自体も持ってるらしくて、
生長に重要な働きをするんだって。
それを人の手で作ったのが農薬「ジベレリン」。

めしべが発情してるタイミングで、
かつ、おしべの花粉がめしべの奥の胚嚢をノックするより先に、
合成ホルモン剤をぶっかけて擬似受精させるって感じかな?
結果、果肉は膨らむんだけど種は作られない、ということになるみたい。

しかも、です。
自然な状態では受精がうまくいくとは限らないのだけど、
ジベ処理でほとんどすべての花に実がつき、
ほっとくとお互いの粒がつぶし合うまで膨らむので、
一房ずつ粒間引きをしてやらなきゃならなくなります。
世の中の「ぶどう」のイメージに近づくように、
農協の規格通り大量に出荷しやすいように、
ぶどうの形を作る作業でもあります。
これがまた暑い時期、中腰で、つらい仕事。
ぶどうの里のぶどう農家は何十年もこれをやってきました。

 

種のあるベリーAの粒は真ん丸になるよ。
種無しのは少しラグビーボールの形に近くなるよ。

種ありは粒の中にしっかり繊維質が形成されて、
それと比べると種無しはより脂肪太りというか、
水ぶくれみたいになってるよ。

このあたりの農協は種無しのベリーAをニューベリーAという商品名で出荷するよ。
そんで種無しのピオーネはニューピオーネって呼ぶのだけど、
ただ、最近はどのぶどうも種無しが当たり前になっちゃって、
そんな呼び名はあんまり意味ない感じ。

 

ジベ処理されたぶどう。

クスリのお風呂と妄想の力で水風船のキューピーさんを孕む処女。

ってたとえればいいかな。
世界のどこかのワインの里では、
宗教上の理由で農薬としてのジベレリンの使用が禁止されてる、なんて
話は聞いたことないけど、ぼくはついいらぬ妄想しちゃいます。
種無しぶどうの、食べ過ぎかな?
種ありぶどうの、食べ過ぎかな?

 

一般にベリーAには2回ジベ処理します。
開花前1週間以内と、実が小豆大になった頃。
1回目は無核化のために、2回目は生長促進のために。

今頃、ぶどうの里ではほとんどすべてのぶどう農家が、
露地ぶどうの1回目のジベ処理に追われているはずです。
専用のコップに入った乳白色の液体に、
ぶどうの房を浸すのに大忙し。※

ナゴミカルは、ぶどうの里でベリーAを栽培をしているけれど、
ジベ処理なんてしなくていいよね。
残念ながら農薬屋の売上にはならないけど、
どうせ、ワイン用のぶどうだし。

いやいや、どうせじゃない!
ジベ処理しないほうが、
おいしいベリーAになる、
おいしいワインになる、
ぶどうの里の先輩農家はみなさんも口を揃えてそういいます。(小さな声で)

だけど、種無しぶどうが食べやすいって「消費者」が求めるんだって。
しかも、収量を得られるときたら「生産者」としては、そりゃあ使っちゃうよね。
ワイン用のぶどうとして出荷する分にも使ってるんだって。

彼らが法律を犯してないってことはわかってるよ。
むしろ彼らにとっては必須の行為。

だけど、道徳観とか、そういうことを抜きにしても、
不思議に思うのよ、おいしいワイン飲みたくないのかなって?

ぶどうの里が産声あげて半世紀以上経っても、
ぶどうの里にワイナリーがない。
これは、原因か、結果か。

ともあれ、ぶどうの里にソリューションを。
ナゴミカル、気合い入れてがんばらないといけないよ!
まずは、ジベ処理をさぼることから。

※最近はジベ処理に噴霧器も使われるそうです。

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