お葬式としてのワイン作り

山中史郎君

ありゃ?
「なにも足さない。なにも引かない。」って、サントリーのコピーだよね?(笑)

サントリーピュアモルトウィスキー山崎

でも、まあ、ウィスキーじゃないし、ワインの「ボトル」だから。
ジョークってことで。

ところで、これ、1992年〜1994年につかわれたキャッチコピーだそうです。
バブル崩壊、就職氷河期というぼくらの青春時代、「芸術大学」で「足した分をどこかで引けよ!みっともねえんだよ!」って、「一般教養」を学んだ、ちょうどその頃です。

あれから20年も経っちゃったけど、実践できてるかなあ。。。
『ポジティブにさよなら』

ぼくらが活動拠点を置く地域は衰退していってるぶどうの産地です。
仁井山地区だけみると高齢化率40%ぐらいかな。
だから、後継者のいないぶどう農家から、「もうやめる」、引退する農地ばかりを借りることになります。

どんどん盛り上がってる場所、時代、あるいは市場に、イケイケで参戦するのとはちょっと違うよね。

かつてこのぶどうの産地にも全盛期があり、実は当時、大手企業酒造メーカーのワイナリー建設話もあったと聞きます。
だけど、結局作られることはありませんでした。
あの時ワイナリーを作っていれば、なんて、野暮なことを言うつもりはありません。

その理由はまあ何であれ、地域がワイナリーを作らないことを選択したのは事実。
そして、もはやこの産地は、5年後でさえどうなるかわからない、そういうところまで来ているのもまた事実です。

いわば、後期高齢産地。
そんなこと言ったら怒られる?
いやいや、盛者必衰、たまたまその時なんです。

そんなところに今更ワイナリーなんですが。
しかも素人2人が、そんな話しを持ち出して。
誰の目にも明らかな勝算などあるはずがないのです。

冗談ですかね?いや、本気、ガチですよね。

しかし、ぼくらが本気かどうか、どうすれば理解してもらえるんでしょう?
状況からして、どう考えても、恐らくこういう答えしか導き出せないはずです。

「もしかしてこいつらぶどうの里と心中する気か?」

いやいや、ワイナリーを作った上に地域と心中するつもりはないよね。

ぼくらは最初「ぶどうの里にはぶどうがたくさんあるんだから、ワイナリーさえ作ればワインが出来る」と思って動き始めました。
だけど、 しょっぱなに地域のぶどう農家にこう言われましたね。

「産地のぶどう、特にワイン用のベリーAは、JAを通して、契約した取引先に出荷しているし、近年、そことの契約出荷量の下限を割り込む状況でもあるので、とても君たちに提供する話にはならないなあ。」

覚えてますか?
そして、加えてこうアドバイスいただきました。

「だけど、自分たちで作るぶどうなら誰も文句はいわないと思うよ。」

有難いことに、この時、方向性が見えたよね。

ワインを作るにはぶどうが必要。
ただし現役のぶどうは行き先が決まっている、ゆえに現役のぶどう畑も手に入らない。

ここから、ぼくたちのビジネスモデルが導き出されます。

引退するぶどう畑の介護施設、
ぶどう畑の終末期医療、
ぶどう畑の葬儀屋、
ぶどう畑の墓石作り、
ぶどう畑の墓地管理、
それら一連のサービスと、
ぶどうという現物の取引。

つまり、

お寺としてのワイナリー。
お葬式としてのワイン作り。

ぶどう畑をあずけたいという地域からのご要望は「すべて」引き受ける!
読経を断るお坊さんはいないでしょ?そういう精神で。

そんな思いでぼくたちの「一般教養」を、『ポジティブにさよなら』を、
実践していくってのはどうでしょう?

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